大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和47年(行ツ)90号 判決 1973年1月25日

京都市中京区烏丸通竹屋町下る少将井町二三〇番地

上告人

吉村肇

同市中京区柳馬場通二条下る等持町一五番地

被上告人

中京税務署長

藤原多八

右当事者間の大阪高等裁判所昭和三九年(行コ)第三六号、同四一年(行コ)第三一号所得税更正決定取消請求・同附帯控訴事件について、同裁判所が昭和四七年五月一八日言い渡した判決に対し、上告人から一部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

原判決挙示の証拠によれば、原審の認定判断は相当として肯認することができ、その認定判断の過程にも所論の違法は認められない。したがつて、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、ひつきよう、原審の認定にそわない事実に基づいて原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、すべて採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸盛一 裁判官 岸上康夫)

(昭和四七年(行ツ)第九〇号 上告人 吉村肇)

上告人の上告理由

一、原判決に影響する憲法の違反である。

本件訴訟の主因とみなすべきは各訴訟の経過によつて明らかである。

昭和三二年四月に民青秘密結社員の共産主義者佐久間某なる立命法学部第二部生、京都市中京区間之町通夷川上ル楠町六〇〇番地佐久間又四郎方を中京税務署長が諜報機関部員として採用中のところ資本主義破壊の手段に本件のでたらめ諜報をしたが税務署はこれを採用して時代錯誤の無謀な原処分の根基たる所得計算不明のまま十分の調査をしないで本件の見込推定の専政課税を決定をした。

従つて原処分決定に根基たる所得計算がないからできない甲一四号証で明らかである非民主的の暴君、課税であるから納得のゆく説明が主権者にできない脅迫で徴収目的の達成を企むに至つた暴君、行政の手段である多数の密告人がある外、原処分の根基たる所得計算に合致する相手方の脱税調書がすべて出揃つたと府市に通報相呼応して府・市・国・三税が期限を切つて納税の矢の催告をなし、差押えから競売すると紳商連加盟業者及び得意先を脱税容疑で調査すると称し、査察や呼出しを数年間に及び強行した当時の責任者である中京税務署長は前任地の大津市において、納税者からカメラ等を収賄し発覚して起訴されるに至り免官となつた専政課税の救済の手段がなくなつた占領軍政時代のなごりをとどめた、暗黒税政の代表的のものである被課税者の説明が如何に正しくとも一度誤認した処分の決定は改めようとは致しません。相手が小市民で力が弱いとみれば誤つた決定を押し通す専政官吏であるから当然である。

京都不動産紳商連盟の吉村紫山は民主団体の理事長として団体加入業者の営業の繁栄をはかることが主要目的であることは当然のことである。

京都不動産紳商連盟の結成された昭和二七年当時の京都市の不動産仲介業者の実態は、その日暮しの零細業者達で無資本のブローカーが九五%を占めていた京都全市の業者数は約二百余名。店舗もなく、小路内裏通の住居内で営業はしているが主として業者間を走り廻つて物件顧客の出会いを待つて売買を成立させるという不安定な営業を続けている俗にいう千三つ式の商法を営むから大半は生活に困窮している。これを救済なすべく吉村夫妻及び安田清之助が見かねて三者の全財産を投入する決心を固めたものである。業者はまず紳商の誇りを与え、生活苦からの誤ちをおかさないようにと京都市全業者の営業を発展させ、併せて顧客と物件のアンバランスの是正と改善をなさんとして求める物件が容易に求め得られるようになすべく、京都市内外の不動産売物件の全体と買方の顧客注文を一堂に集計して業者と顧客双方に告知して売りと買いを迅速にするべく売買の確立改善を企画したものである。

原始的な千三つ式の営業を改めて不動産の流通経済を改革して業者協力開発機構の達成を為すべく、これが紳商連と交換所の発足した理由と経過である。従つて、公共性の企業体であるから連盟直営の京都不動産交換所の吉村秋子も同主旨で経営する事は勿論である。

言うなれば交換所や紳商連が赤字続きでも加盟業者が繁栄して顧客に喜んで利用されることになればと夫妻は力を合わせて全連盟業者手持ちの物件を新聞に無料で広告するが、広告費は吉村紫山と吉村秋子両人が昔からの事業資金で支払つており、一円たりとも物件所有者や顧客及び加盟業者からは受け取つていない加盟業者の物件の新聞広告費を吉村紫山の負担でしても業者である加盟店は自由に顧客と物件を組合せ、取引がすんだ後に二パーセント以下の手数料を会費として紳商連や交換所何れかの一方へと支払えば足りるとする非営利公共的団体企業の実態を実際に三〇年、三一年、三二年及の三年間申告所得額の根基たる所得計算をして提供し収入原明細に記帳説明しても、専政税行政をする事が正しいと考える中京税務署長は容易に理解しようと致さない。

中京税務署長は、原処分の根基たる所得計算に合致する数字が記載されていない帳簿は認めないと上告人の帳簿と数字を認めないが、その理由として二重帳簿がある事は諜報者によつて明らかであるという。吉村備え付の帳簿はこれ以外にはない。二重帳簿があるからそれを提出しなさいといわれても二重帳簿はないから出せない。疑しくは貴官、税務署長が組織を動員すれば京都の各税務署各管内の三〇年、三一年、三二年の各年度毎に不動産を売買して吉村紫山、吉村秋子の紳商連及び交換所に支払つた手数料の総額は判明するではないか。三〇年、三一年、三二年、六月迄の新聞広告に出した物件各種類、金額物件場所は一目瞭然として判明する。

なんとなれば、京都、朝日、毎日、各新聞案内広告に各掲載には必ず町名入の広告であるから町名不動産売買による所得申告書には売買による手数料は必要経費として控訴されるから記載されている各手数料の集計によつて明らかになるではないか。

調査をして欲しいという上告人吉村紫山に対し、中京税務署長は曰く、いやしくも一度見込課税をした以上は上告人の二重帳簿の提出を待つて、調査の後に取消す部分があれば取消すが…。吉村曰く、ない二重帳簿の請求を受けてもどうする事もできない。先に提出したこの出納簿が正しいものである。民主的収税官吏なれば主権者に対し誤つた判断でなした推計課税を取消処分にするのが当然でないか。二重帳簿類があるといつている諜報人と対決したいと前後十数回に及んで中京税務署長室において署長と直接談合したが、署長は今はその時期でないと逃げを張つて、只、納税せよ。後になつて取り過ぎが判明したら全部でも返してやる。押問答を繰り返している間に署長が収賄で免官になつて退職した後、次の署長も次々転勤して前任者の決定は分らないと繰り返しで述べるが、誤つてなした前任者の決定については税額を取消して主権者を救済しようとは致さない非民主的な行政である。

税政や裁判には小手先や小細工にも達者物揃いの行政官や司法官であるが、大所高所からする税政に見るべきものはない。鹿を追う猟師山を見ずか、有能官吏の通弊である。国家百年のため、専政税制の民主化のためにと敢えて十五年間訴え続けているものである。

吉村紫山が帝国短歌学院時代からの創業昭和十二年の出版業の蓄積資本で不動産業流通機構改革や前後二回の五カ年計画で漸く、その緒についたから三二年以降、黒字になるであろう、その時には、税を納めさせてもらいましようと誠意をもつて談合した心血をそそいだ三年間の公共企業団体を税務署の圧迫により遂に解散するのやむなきに至り、廃業した。三二年五月三一日である。

吉村紫山の過去二〇余年間の蓄積資本や顧客の預り金等を原処分の根基たる所得計算を主権者である被課税者に告知できないような推定専政課税の決定は決定処分に誤りなしとする控訴審原判決は憲法第二九条の違反は明らかである。被課税者に原処分の根基たる所得計算を告知できない見込課税の決定は主権者である国民の基本人権を侵すものであるから憲法第一一条の違反は明らかである。よつて控訴裁判は前記憲法に違反する違法な裁判である。

・この種の事件の先例である相反する判断をなしている。

課税標準の基礎となる所得の存在については、課税権者側においてその存在を合理的に首肯せしめるに足る一応の立証をなす義務がある。

佐賀地裁昭和二九年八月三日判決

・この種の事件の先例である相反する判断をなしている。

租税の賦課処分の取消変更を求める訴訟においては、一般的に、賦課処分を為す者に、処分の適法なことの立証責任があると解すべきである。

昭和二四年(行)一一〇

昭和二四年十二月二十日福岡地裁

・この種の事件の先例である相反する判断をなしている。

元来、課税所得金額に関する取得変更訴訟においては、所得が原告にありと主張する被告たる行政庁においてその事実を立証する責任を負うものと解すべきである。

昭和二三年(行コ)二八号

昭和二五年十二月二十日鳥取地裁十号同旨判例昭和二六年行九

昭和二七年四月十日秋田地裁

・この種の事件の先例である相反する判断をなしている。

通則法八八条の趣旨

なお、国税通則法八八条において、裁判所が課税官庁側の主張を合理的に認めたときは、原告側がまず証拠の申出をすべき旨の特別の規定を設けているが、これは立証責任に関する規定ではなく、単に証拠申出の順序を定めたにすぎないけれども、この規定は既述の如く被告たる課税官庁側がその適法要件について立証責任を負うこと、しかしその立証の程度については、その主張の合理性の有無との関連が考慮せられるものであることを前提としていると解せられよう。

・この種の事件の先例である相反する判断をなしている。

所得税額決定取消訴訟においては、課税標準となるべき所得の存在については課税権者の側において、その存在を合理的に首肯せしめるに足る一応の立証を為すべき義務があると解すべきである。

昭和二五年(行)一六一

昭和二六年十二月十日福岡地裁

二、原判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある民事訴訟法を適用すべき本件行政訴訟事件を誤つて刑事訴訟法第三二八条を採用した控訴審の原判決は行政訴訟法第七条の訴訟に関し、この法律に定めがない事項については民事訴訟法の例による、即ち、中京税務署長が原処分の根基たる所得計算を主権者たる上告人に対し告知する義務を故意に十余年にわたり抛棄する前項憲法違反を故意に行なつて昭和四三年の控訴審弁論終結の段階に至り推定課税原処分の根基たる所得計算の一部約二%程を口頭弁論主張及び乙第二一号証、第二二号証、乙第二三号証の架空弾劾証拠を提出し、当件聴取者に対する時効を明らかにした後に故意にでたらめの証拠を提出した主権者に告知の如く見せかけた所業は、税務署官吏の不法なる原処分の救済に手を下そうとしない非民主的官吏の集団である、税務署行政の同僚の間違いはこれをかばうが主権者の奉仕はしない非民主的の常套課税徴収手段である。かかる違法手段で作成された証拠と主張は、故意または重大な過失により時機に遅れた攻撃防禦方法である外、被上告人が課税の原処分に対する根基たる所得計算を明白にするようにと主権者たる課税者より機会ある毎に告知の請求をうけているが、故意に黙秘を続けて漸くに二%にも満たない弾劾証拠を提出し、所得計算書用の弾劾証拠として課税者に告知すべく提出したにすぎない。かかる法廷戦術は故意に十年余間不法に主権者の上告人に原処分の根基たる所得計算の前項条憲法第十一条第二九条の違反である外本件行政訴訟法第七条に違反して敢えて刑事訴訟法の第三二八条を適用し弾劾証拠としたが、残りの九八%の課税原処分を適法とした控訴審の判決は刑事訴訟法第三二八条を誤つて適用した原判決は、行政訴訟法七条に違反は明らかであり誤つた判断で弾劾証拠とした、控訴裁判は行政訴訟法第七条の法令に違反する違法な判決である。

・この種の事件の先例である相反する判断をなしている。

被告税務署長自身も原告の帳簿の記載がずさんを極め到底信用できないとしながら、その信用できない帳簿から、前記比率を計算してこれを推計の基礎とするというのであるから、その主張自体すでに不合理という外はない。

前橋地裁昭和三五年五月二六日判決

・この種の事件の先例である相反する判断をなしている。

米の消費量を一合とするか、または一・五合として計算するかというような何れが正しいとも決し兼ねる極めて些細な事柄によつて、その結果重大な変動(三四〇、三〇九円の増減を生ずる)を及ぼすおそれのある推計方法はその合理性は極めて乏しいものといわざるを得ない。

前橋地裁昭和三五年五月二六日判決

・この種の事件の先例である相反する判断をなしている。

国税庁または国税局法人税課で作成した効率調査表はあくまで申告納税制度の適正を期するため、会社経理の勘定科目の不合理点を他の調査素材と相まつて究明する一資料にすぎないのであるから効率調査の結果を上廻る必要経費をもつて直ちに不当支出であるとは即断できない。

神戸地裁昭和三一年七月十三日判決

三、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある、公共的企業団体である紳商連は手数料を徴収しないが、会費として取り引きが成立した業者より二%以下の会費を支払えば足りるという組織団体である。不特定な業者を対象にして不動産の流通機構の改革を企画したものでない。従つて、宅地建物取り引き業法に該当しないものである、よつて吉村紫山は非営業者であつて団体の役員にすぎない。従つて収入はないという、過去に蓄積した事業資金の蓄積を少しずつ食いつぶしてもつぎつぎとつぎこんで団体の繁栄を図つていたものである、京都不動産交換所主吉村秋子が宅地建物取り引き業法第一条及び第三条により京都府建築課へ二九年十月十日に提出した公文書記載の資産調書によると現金預金合計四百十万円であるが内預り金は二百万円であつた。しかるに四六号証の二昭和三一年十月十日に京都府建築課提出の宅地建物取引業者登録申請書へ提出した公文書によると現金預金の合計が三百十万円で第三者からの預り金の合計が百六十万円である。よつて現金預金の合計金額が減少し、二年間で百万円の減少であるが預り金では六十万円の減少である。

二九年九月七日より三一年九月七日までに減少した事業資金は百万円になつている。

生活費に二年間で約四十万円を消費して残りの六十万円は交換所及び紳商連盟の営業資金につぎ込んだものである。このように実態を公文書で示し、詳細に所得の計算書を示し説明をしたが、事業資金はその年度の利益金であるからという税務署側と真向から対立したが、吉村に収入を与えたという調書が全部出そろつている諜報員の報告を基にして収益をあげたさきも調査ずみである。その計算書を証人を出して下さい。

課税権者側で課税の実態を課税者に知らせることは当然である。主権者である国民に納得させて収税するのが民主国の官吏である。税務署の証拠を出してもらえば税金の有り無し、黒白は直ちに判明するではないか。万一、証拠がないならばすみやかに決定を取り消して主権者を救済するのが義務ではないかと言つて訴訟になり、十五年間を経過した今日も課税権者側より告知を放置されている。今は言うべきでないと言つてくり返すのみである。この実態なき課税決定処分の取り消しに対し、公文書記載の資産調書をも排斥し事実の誤認で行なわれた控訴裁判である。

・この種の事件の先例である相反する判断をなしている。

簿外預金の年間の入金高のみから、簿外販売高を推認することには、何ら合理的根拠がない。

大阪地裁昭和三十年十一月十五日判決

四、原判決は判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある。

30年増加額(264,422+(80,544)=1,069,666)

31年増加額 805,244

30・31年増加合計額 1,069,666

(仮1)32年1月在高 1,069,666

32年12月残高 3,027

32年減少額 1,066,639

30年+31年増加合計額(1,069,666-1,066,639=3,027)

32年減少額 1,066,639

(30年31年32年)3カ年増加額 3,027

乙第七号証には三二年期首は一、〇六九、六六六円であり期末は三、〇二七円で資産減少額は一、〇六六、六三九円となる。三〇年、三一年両年度合計資産増加額が一、〇六九、六六六円となるから三二年の減少額を差引くと三、〇二七円となる。三〇年、三一年、三二年三カ年の資産増加額は三、〇二七円となるが利子の自然増加額を差引くと零に近い数字である事は明らかである。

よつて原判決流にこの資産増減法で推計することとすると三〇年、三一年、三二年、所謂資産増加額は三、〇二七円となるから三〇年、三一年、三二年の両三年間の税額は零となる勘定となる。

(仮2)32年期首 1,069,666

32年5月31日(残額) 341

32年5月31日(資産減少額)1,069,325

仮りに原判決で三二年分の計算をすると仮(2)が正しい、仮(1)(2)ともに原判決は事実の誤認がある。

原判決30年所得額 580,653(580,653-324,231)=264,422(資産増加)

内訳

原判決30年所得額 264,422

原判決30年生活費 324,231

原判決31年所得額 1,144,048(1,144,048-338,715)=805,333(資産増加)

内訳

原判決31年所得額 805,333

原判決31年生活費 338,715

原判決32年所得額 3,027(1,069,666-1,066,639)=3,027(資産増加)

内訳

原判決32年資産減少額 1,066,639(年度末)

原判決32年期首額 1,069,666

原判決32年生活費(1月1日より5月31日まで)

1カ月(282,260×5)=1,411,300

原判決32年所得額(1月1日より5月31日まで)

341

原判決32年資産減少額(1月1日より5月31日まで)

1,066,639

原判決生活費30年及び31年合計

662,946+141,300=804,246

原判決所得額30年31年32年5月31日所得額

1,070,096

以上例(一)例(二)何れを計算しても甚だしい計算に事実誤認である。

原判決は吉村秋子の京都不動産交換所の事業資金の公文書中の金庫保管を甲四六号証の一及び二を排斥したり、安田清之助、吉村紫山の金庫預金を全部排斥なしたるもので事実誤認が明らかである。三〇年三一年三二年五月三一日までの生活費、同会社設立、払込金、店舗購入費が小市民の吉村肇個人、一年二年位の短期間の営業収益金で購入し得るものでないことは明らかである。よつて、生活費の支出及び店舗購入資金は吉村紫山、吉村秋子、安田清之助の多年蓄積の事業資金及び諸財産でなされおる事実を誤認したところの控訴判決である。

京都不動産紳商連盟及び京都不動産交換所は昭和三二年五月三一日に解散した。

昭和三二年六月八日にKK、大阪不動産交換所開店代表取締役吉村肇、取締役吉村秋子、取締役安田清之助就任は乙第五三号証、乙第一四号証、甲四九号証で争いのなき事実である、原判決では、これ等の事実を排斥し、甲書証、甲人証を全部排斥し、課税権者一方に偏した事実誤認がある。

銀行預金と利益金を同一とみなすと中京税務署長に脅かされ三〇年、三一年、三二年に預つた全部の預り金を三二年四月に返金したが、かかる特殊事情のあつた事を見落して全体に当てはめて判断した原判決は事実の誤認である。

即ち、税務署の査察強行で以後営業の不振を覚悟して泣く泣く一時に返金したものである。

・この種の事件の先例である相反する判断をなしている。

小市民が比較的高額の不動産を購入する場合、その資金は、日常生活品の購入費が日々の収入から支出されるのを通常とするのと異なり、むしろ長期間の貯蓄により賄われるのを一般とするから、店舗住宅の購入資金が営業収益から支出されたものであるとしても、直ちにそれが購入年度の営業収益から支出されたものとは推定し難い。

大阪高裁昭和三三年十二月十日判決

五、原判決は判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある。即ち、

原判決はごく短期間のうちに預り金が全部返戻されるや、預り金の出入りに拘らず変動はなく期首期末残高が控訴人の収入に属するものとみるのが相当である。一一三万がこれ等の預り金の返還にあてられたか否かは信用できず、事実の誤認がある。当時、稀少価値の電話加入権や場所名を指定し稀少価値の高い指定の不動産購入には永年価格一割前後から三割の小額の金子を三〇年三一年三二年の両三年にまたがつて預つた実績多数がある、三〇年三一年三二年の銀行預金残高を営業収益と見る事実誤認がある。証人末松外治が一年五カ月、三〇年十月より三二年二月迄の前後、電話購入資金二〇万円、三〇年一回二回とも返金した。三二年一回不動産購入預り金五万、一回返金、三〇年三一年分二〇分は返金している。安田清之助不動産購入資金等が長期にわたり数年間保証金等の名目で預つていた。

銀行預金には預りの外、顧金及び知人の小切手を現金に換えたもの預り金を銀行に取りに行くのをやめて吉村夫妻の事業資金は金庫内に銀行預金の多いときは十数倍、少くとも何倍かあるをもつてその現金を渡した片又証言に見る食い違いのある事は当然である。安田と秋子とは十年来の知人にて、金庫には常に安田の預り金の数倍の現金が保管されている事を承知するをもつて、安田は安心して全財産を預けており安田の証言を排斥する原判決は事実誤認によるものである。片又、和田重、和田信、大木、板野の神部各ゼントルマンの証言を全部排斥し、上告人会社家屋の住人で元仲居で先妻病床中に入り込み奥村俊二先妻と同居して子供を産み伐し、先妻死亡の原因となつている現在は明渡しである訴訟中の奥村俊二外、左官業脱税で取調べ中の奥村浅子は以前にも脱税で家財道具や左官業道具類の競売をされている税務署アレルギー患者を強迫して有利に税金をまけてやる等の甘言にでたらめ証言を採用する原判決は事実誤認である。吉村紫山、吉村秋子両人は出版を二十数年経営している。安田清之助は親子三代の左官業請負業者であり、不動産も所有している。以上三人を浮浪者同然のその日ぐらしの無一文に近い貧乏人で企業資金無一文と見た原判決には重大なる事実の誤認がある。

以上いずれの点よりするも原判決は違法であり、破棄さるべきである。

以上

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